
小さい子供がいるんですけど、子供の虫歯菌は親からって聞いたことあります。食器とか別にして気を付けた方がいいですか?



親から子どもへの虫歯菌の感染を予防するために、親とスプーンやコップなどの食器の共有を避けるようにとの情報が広がっていますよね!
大人の口の中には、虫歯の原因菌をはじめとして約500~700種類の細菌がいます。
しかし、生まれたばかりでまだ歯の生えていない赤ちゃんの口の中は細菌は存在しておらず、無菌状態です。
そのため、赤ちゃんに歯が生えて離乳食が始まる生後5~6ヶ月頃になると、「親が使ったスプーンやお皿、コップなどを共有したり、キスをしたりすると、赤ちゃんに虫歯菌が移るからやめたほうがいい」という情報を聞いたことがあるママさんやパパさんも多いのではないでしょうか?
実際にこの情報を信じて、子どもの虫歯予防のために、親子間で食器を共有しないように気をつけているご家庭もあるかもしれません。
今回はこの噂について、どうしたらいいのかお話ししていきたいと思います。
2023年8月31日に「日本口腔衛生学会」が見解発表しています
実は、「食器を共有しないことが、子どもの虫歯予防になるという科学的根拠は必ずしも強くない」という声明を「日本口腔衛生学会」が発表し、話題となりました。きっと、この噂が広まりすぎて、問い合わせなども多かったんですかね?
引用:日本口腔衛生学会「乳幼児期における親との食器共有について」
はじめ
以前から、親から子どもへのう蝕原因菌の感染を予防するために、親とスプーンやコップなどの食器の共有を避けるようにとの情報が広がっています。しかし、食器の共有をしないことでう蝕予防できるということの科学的根拠は必ずしも強いものではありません。最近、親の唾液に接触することが子どものアレルギーを予防する可能性を示す研究内容が報道されました。それに付随し、親の唾液からう蝕の原因になるミュータンスレンサ球菌が子どもに感染するリスクを高めると報道で触れられていますので、情報発信をいたします。



近年の研究では湿疹の発症率が減ったり、アレルギー性鼻炎の発症率が低下するといった報告がなされています。
親からの口腔細菌感染は食器の共有の前から起こっている
最近の研究で、生後4か月に母親の口腔細菌が子どもに伝播していることが確認されています 。食器の共有は離乳食開始時期の生後5~6か月頃から始まりますが、それ以前から親から子どもに口腔細菌は感染しているのです。日々の親子のスキンシップを通して子どもは親の唾液に接触しますので、食器の共有を避けるなどの方法で口腔細菌の感染を防ぐことを気にしすぎる必要はありません。



2015年の研究では、離乳食開始前の歯が生えていない時期から母親の口腔細菌が感染っていることが報告されています。つまり、食器共有前から唾液の感染が起きているということです
う蝕の原因菌は、ミュータンスレンサ球菌だけではない
親のミュータンスレンサ球菌が子どもに感染することは複数の研究で確認されています。しかし口腔内には数百種以上の細菌が存在し 、ミュータンスレンサ球菌だけでなく多くの口腔細菌が酸を産生し、う蝕の原因となりますので、ミュータンス連鎖球菌だけがう蝕の原因菌ではありません



糖分を分解できる細菌はこの中にたくさんいるため、虫歯の原因は単独の菌ではないとされています
食器の共有に気を付けていても、子どものう蝕に差はなかった
う蝕は砂糖摂取や歯みがきなど様々な要因で起こるため、食器の共有と子どものう蝕の関連を調べる際にはそうした要因を考慮する必要があります。う蝕に関連する複数の要因を調べた日本の研究では、3 歳児において親との食器共有とう蝕との関連性は認められていません



つまり、過度に対策しても効果が出ないということです。
子どものう蝕予防のために
親から子どもに口腔細菌が伝播したとしても、砂糖の摂取を控え、親が毎日仕上げみがきを行って歯垢を除去し、またフッ化物を利用することでう蝕を予防することができます。特に、フッ化物の利用は多くの論文でう蝕予防効果が確認されている方法です。フッ化物配合歯磨剤の利用方法は4学会合同の推奨方法が出されていますのでご参照ください



子どもに口腔細菌が伝播したとしても、親が毎日「仕上げ磨き」を行って歯垢を除去し、砂糖の摂取を控え、フッ化物の塗布を行うことで、子どもの虫歯を予防できるといいます。
まとめ
子供に歯が生えたら、ずーっと虫歯菌がなしでいることはできません。口の中には500~700種類もの細菌が生息しています。この細菌は年齢や状況によってどんどん変化していきますから、お父さんお母さんの方々には、子どもが虫歯にならないための習慣づくりをすることのほうに力を注いでほしいと思います。
では、また次の記事で



歯ぁ磨けよ~