食後すぐに歯みがきをしてはダメという話しを聞いたことがありませんか?
ネットやSNSでも食後は最低30分経ってから歯みがきしたほうがいい。と載ってる記事や話しも見かけたことがあります。
それを信じて守っているため、朝ごはんや昼ごはんの食事の後に出勤や仕事で歯みがきができない…なんて悩んでいる人もいるかもしれません。
私も患者さんやプライベートで友人たちに聞かれたりします。
私がよくみるYouTuberさんが今日は歯科検診にいくと配信時に言い、歯科の話題になったとき、リスナーさんの何人かが「食後すぐに歯磨きするのは良くないんだよね」とコメントもしていました。
どこからそんな情報が広まったのか?
ためしてガッテン
2010年9月22日に「ためしてガッテン」の番組の中で、「正しい歯みがき」のコツは「食後すぐに歯をみがかない」こと、と番組内で放送したようです。
日経新聞
2012年2月に日経新聞は「食後すぐの歯磨きはNG 虫歯予防の新常識」という記事を載せました。

TBSの番組
また、2018年9月のTBSの番組でも「食べたらすぐに歯磨き」は間違っていると番組内で放送したようです。

これを見たらネット記事やTVでもそういってるんならそうなんじゃないの?と思われるかもしれませんね。
この他にも違う記事や番組、SNSで見聞きした人もいるんじゃないでしょうか?
この俗説は酸蝕症という病気の歯みがきの方法や実験と混同している説
酸蝕症(さんしょくしょう)とは
酸によって歯が溶ける症状をいいます。
え?それって虫歯とどう違うの?と思われるでしょう。
虫歯との違いは細菌が関与しないという点で異なります。
昔はメッキ加工やガラス工場、金属精錬で働く人が酸性のガスを吸ってしまうことでなる職業性の歯の病気として知られていました。しかし、現在では、作業環境が改善し、職業性による酸蝕症は減少しました。
そして今では飲食物による生活習慣病の1つとして注目されるようになってきました。
その罹患率は、4人に1人(約26%)とされていますが、酸蝕症を自覚している人は多くはないです。なぜなら、酸蝕症の初期は、歯の表面に滑らかな光沢ができ、時には歯が丸みを帯びた外観になるだけで、自覚症状がないからです。飲食物による酸蝕症と職業性に酸蝕症は程度が異なります。
酸蝕症の歯みがき
その酸蝕症の口腔ケアの方法として飲食後30分~1時間経ってから歯みがきを行うことが有効とされています。
しかし、健全な歯に対して歯みがきの時間を制限することに科学的な根拠はありません。
健全な歯なのに酸性食品摂取後は30分経ってから歯みがきしたほうがいいという書き方をしている歯医者さんの記事やSNSの情報もありますが、これについては日本歯科保存学会が確認できていないと明記しています。
あくまで、「酸蝕症の人は」有効とされているだけです。
酸蝕症の実験
実験的に酸性炭酸飲料に歯の象牙質の試験片を90秒間浸した後、口に中にもどして、その後の歯磨き開始時間の違いによる酸の浸透を調べた論文で、虫歯とは違う「酸蝕症」の実験です。
実際の人の口の中では、歯の表面は上記の実験で用いられた象牙質ではなく酸に対する抵抗性がより高いエナメル質によって被われています。したがって、このような酸性飲料を飲んだとしても、エナメル質への酸の浸透は象牙質よりずっと少なく、さらに唾液が潤っている歯の表面は酸を中和する働きがあり、酸性飲料の頻繁な摂取がないかぎり、すぐには歯が溶けないように防御機能が働いています。つまり、一般的な食事ではこのような酸蝕症は起こりにくいと考えられます。
引用:日本小児歯科学会 学会からの提言「食後の歯みがきについて」
この俗説はステファンカーブという実験からきている説


このグラフに似たような画像を見たことある!と思った人もいるかもしれません。
多くの場合、このようなグラフを載せて説明してる歯医者さんは
「食後の口の中のpHの変化」
「食後の歯のpHの変化」
と説明していることが多いです。
そして「食後は口の中が酸性に傾いて、歯が溶けやすくなっているため食後すぐに歯磨きをすると歯が傷ついてしまったり、歯が溶け出したりする」とのことです。
そういう説明をしている歯医者さんは勘違いしてるor間違えています。
実際のステファンカーブの正しい説明は↓
ステファンカーブとは
10%のブドウ糖液を摂取した後、プラーク(歯垢)内のpHを経時的に測定した実験結果です。「歯」や「口の中」のpH変化ではありません。
「プラーク内のpH=歯のpH=口の中のpH」こんな式が成り立つことなんて絶対ありえません。
そもそも10%のブドウ糖液でうがいした後を、「食後」と言えますか?
普通の食事がこのグラフと同じように示すとは限りませんし、そもそも食事内容も国や人それぞれ違います。
仮に食事で酸性の飲食物を摂取して一時的に口の中が酸性に傾いたとしても、すぐに唾液の緩衝作用によって酸が中和され再石灰化が起こるため歯が溶け出すということはありません。
また、同じような実験として1983年にImfeldが出版した本に各種濃度の砂糖水によって歯に付着したプラークのpHがどのように変化するかを示した研究もあります。

引用画像:ニューノーマル 口腔ケアはどう変わる?
ショ糖(砂糖)の濃度が最小濃度(1%以下)でもプラーク内は歯が溶け出すpHまで下がり、またショ糖の濃度を上げていくとプラーク内のpHも下がり10%を超えるとプラーク内のpHの下がり具合は同じようになっています。
つまりプラークが残っている状態で飲み物、食べ物に少ない量(1%以下)でも砂糖が入っていると細菌はすぐに酸を作り出し、歯の脱灰が進行してしまうということです。
むしろ食後にすぐ歯みがきしてプラークを残さないようにしっかり歯を磨いたほうが良いとされます。
各歯科学会からの見解と提言
日本小児歯科学会
食後の歯みがきについて
これまで保育所・幼稚園、学校では昼食後にはなるべく早く歯みがきをしてから遊びましょうと指導してきています。その理由としては、むし歯をつくる細菌が多量に含まれる歯垢(プラーク)と食後口の中に残留する糖質を早く取り除くためだからです。
ところが、最近になって、食後すぐに歯をみがくと、あたかも歯が溶けてしまうというような報道が新聞やテレビで伝えられたため、現場がやや混乱しているようです。
これらの報道のもととなったのは、実験的に酸性炭酸飲料に歯の象牙質の試験片を90秒間浸した後、口の中にもどしてその後の歯みがき開始時間の違いによる酸の浸透を調べた論文で、むし歯とは異なる「酸蝕症」の実験による見解なのです。
実際の人の口の中では、歯の表面は上記の実験で用いられた象牙質ではなく酸に対する抵抗性がより高いエナメル質によって被われています。したがって、このような酸性飲料を飲んだとしても、エナメル質への酸の浸透は象牙質よりずっと少なく、さらに唾液が潤っている歯の表面は酸を中和する働きがあり、酸性飲料の頻繁な摂取がないかぎり、すぐには歯が溶けないように防御機能が働いています。つまり、一般的な食事ではこのような酸蝕症は起こりにくいと考えられます。
小児における歯みがきの目的は歯垢の除去、すなわち酸を産生する細菌を取り除くとともにその原料となる糖質を取り除くことです。歯みがきをしないままでいると、歯垢中の細菌によって糖質が分解され酸が産生されて、歯が溶けだす脱灰が始まります。このように、歯垢中の細菌がつくる酸が歯を脱灰してできるむし歯と、酸性の飲食物が直接歯を溶かす酸蝕症とは成り立ちが違うものなのです。
結論としては、通常の食事の時は早めに歯みがきをして歯垢とその中の細菌を取り除いて脱灰を防ぐことの方が重要です。
学会としても今後より詳細な情報を提供していく予定ですが、現在のところ、園・学校における昼食後の歯みがきについては、現状通りの方法で問題ありません。
引用:日本小児歯科学会 学会からの提言「食後の歯みがきについて」
ポイントを抜粋
・最近になって、食後すぐに歯をみがくと、あたかも歯が溶けてしまうというような報道が新聞やテレビで伝えられたため、現場がやや混乱している。
・これらの報道のもととなったのは、むし歯とは異なる「酸蝕症」の実験による見解。
・結論としては、通常の食事の時は早めに歯みがきをして歯垢とその中の細菌を取り除いて脱灰を防ぐことの方が重要です。
日本歯科保存学会

引用:歯科保存学会「食後30分間は歯みがきを避けることについての見解」
ポイントを抜粋
・食後の歯みがきについては、食後の早い時間内に行なうことをお薦めします。
・「酸性飲食物を摂取後30 分間は歯磨きを避けるべき」ということの確認はできていません。
日本歯科医師会

引用:日本歯科医師会 読売新聞 第9回「デンタルヘルス・シリーズ」シンポジウム
(来場者の主な質問に対する回答)「歯磨きのタイミングは、食後30分以内が良いのか。(再石灰化の効果との関係性があれば)」
ポイントを抜粋
・食後30分以内であろうと、いつであろうと、フッ化物配合の歯磨剤で歯磨きをすることが大切です。
まとめ
今のご時世はネットを介していろいろな情報が入ってきます。根拠のない情報には惑わされないようにしたいですが、こういった専門的な話しだと見極めるのはかなり難しいです。
私もより正確な情報をみなさんに届けられるようにしていきたいと思います。
まとめ
・食後すぐに歯みがきすることは歯にとって悪いということは嘘。
・食後に歯をしっかり磨いてプラークを残さないことが大事。
・健全な歯の人が酸性食品摂取後に30分経ってから歯みがきしたほうがよいのも根拠なし。
・この説を信じて時間がなく今まで歯を磨けなかった人も、食後の歯みがきを習慣づけてください。
ではまた次の記事で

歯ぁ磨けよ~