こんにちはどら猫です。この間、初めて一緒にゲームをした方からこんな質問をされました。

どら猫さん、私子供の頃に矯正したんですけど、最近歯並びが悪くなってきているんです…。これどうしてなんですか?



質問に答えるにあたってお聞きしたいんですが、ご年齢は?



21歳です!



う~ん…フレッシュ!
実際に口腔内を見てないのでなんとも言えませんが、親知らずが原因となる場合があります。
子供の頃の矯正後の後戻りの原因の1つとして親知らずの萌出(歯が生えること)があります。今回はそのご説明をしていきたいと思います。
子供~若いころの矯正治療後の後戻りの原因


「子供~若い頃に矯正をしたのに、歯並びが悪くなってきた」と悩みを抱える患者さんは多くいます。
せっかくご両親が高額な料金を払ってくれてまで手に入れた美しい歯並びなのに…どうして?
残念ながら、若いころの矯正治療後に起こりえる、後戻りという現象が起きることがあります。その大きな原因の一つが、親知らずにあるんです。
親知らずが生えてくる時期
親知らずは、歯の中でもいちばん最後に生えてくる歯で、一般的にはおおよそ18歳~20歳前半に生えてくる永久歯です。
親知らずは退化傾向にある歯なので、生える時期になっても生えてこない人がいます。
「上下合わせて4本とも生えてこない」人もいれば、「上下合わせて4本すべて生えてくる」人もいるなど、個人差があります。ただ、親知らずは生えてくる時期がバラバラになりやすい歯でも知られています。
早いと10代前半で生えてくる人もいますし、遅い人では20代後半くらいで生えてくるケースもあります。
また、非常にまれな例では「30代~40代に入ってから生えてきた」という人もいるようです。
親知らずが歯並びに影響をあたえてしまう


親知らずがまっすぐ生えず、斜めに、もしくは骨に埋まったまま真横を向いている場合、手前の歯を押す形をとります。その結果、前方部の歯並びの悪化を引き起こすのです。
そのため、子どもの時に矯正をしてきれいに歯並びが整っても、親知らずが生えてくるタイミングで歯並びが再び悪くなる、というわけです。
若い頃に矯正をして歯並びを整えた後には、親知らずによる後戻りをなくすためにも抜くことを推奨することが多いです。
これは歯科医師は「お子さんが高校を卒業するくらいには親知らずを抜いたほうがいいですよ」と、ご両親に説明しているのですが、時間が経って忘れてしまったり、親知らずが生えてくる頃には親の手元を離れて暮らしている場合が多いため、親知らずを抜かずにそのまま歯並びが悪くなってしまう、という流れが多いんです。
親知らずを抜くベストタイミング




親知らずが生え始めると、前歯の歯並びが悪化し始めるタイミングであるのはもちろんですが、抜いた後の痛みや腫れが少ないなどの様々な利点があるからです。



親知らずを抜くと顔がパンパンに腫れると聞いたことありますよね?
10代後半~20代前半では回復力が活発な年齢なため、傷口が早く塞がり、腫れや痛みが30代以降に比べれば、長引かずに済むことが多いんです。
また、親知らずが横向きや斜めを向いて埋まっている場合(埋伏)、周囲の骨を削って親知らずを抜かなければなりません。
20 歳前後の骨はまだ柔らかいことから、素早く抜くことができるのです。素早く抜ければ患者さんの負担が軽減されますよね?
若くない場合は骨が成熟して固くなるため、抜歯の際は時間がかかります。すると、痛みや腫れが長期化しやすく、骨や歯ぐきの回復にも時間がかかる場合が多いです。



顔がパンパンになりやすく、時間もかかる!まあ、熟練の口腔外科の先生なら時間もかからずにすぐ抜いてくれる方もいます!
親知らずを抜くメリット




親知らずを抜くメリットは他にもあります。例えば、虫歯や歯周病予防という観点からも、20歳前後の抜歯がメリットがあります。
親知らずが横向きだったり、斜めに生えていると、親知らずとその手前の歯との間に虫歯ができたり、汚れがたまりやすく深い歯周ポケットができたりします。
深い歯周ポケットは智歯周囲炎(親知らず周囲の歯周病)を引き起こすことがあります。特に成人以降に親知らずを抜歯しても、抜歯跡の骨が減っている場合、深い歯周ポケットが残ることがあり、歯周病の予防には歯科医院での定期的なメンテナンスや、場合によっては人工骨を移植して骨を再生する治療が必要です。
Wisdom Tooth Out(ウィズダム トゥースアウト)


歯科先進国である欧米では「Wisdom Tooth Out (ウィズダム トゥースアウト)」 という考え方が、一般に広く知れ渡っています。
Wisdom Tooth(親知らず)
悪さをする前に、その原因である親知らずを抜いてしまおうという考え方です。
欧米では、子供が中学生くらいの頃に、親知らずの根が完成する前の、赤ちゃんの歯の状態(歯胚)の時に、親知らずを抜いてしまうのです。
その状態だと時では、骨に固定されていないため、少しの力で親知らずを除去することが可能となります。すると、骨の中に固定された親知らずを抜歯するよりも、負担が少なく済むのです。



別に悪さしてるわけじゃないのに抜いちゃうの?抜いたほうがいい時に抜けばよくないですか?



美しい歯並びが周りに与える印象の大事さを重要視するという、日本と欧米の歯に対する意識の違いですね!
せっかく高額な料金を払って、矯正できれいになった歯並びが、親知らずによって元に戻ったともなれば、訴えられるかもしれません。アメリカは訴訟が多いですからね…。訴訟のリスクを回避するためにも、アメリカの矯正歯科医師たちは親知らずの抜歯を積極的に勧めているのです。



子供の頃に矯正をした場合、痛くなくても親知らずは20歳前後に抜いておくのがいいでしょう!