こんにちは。歯科医師のどら猫です。
先日、ゲームのネット友達のからこんな質問されました。

どら猫さん。僕、歯間ブラシ使って歯と歯の間の清掃してるんですけど、いっつも血がでちゃうんです…一番小さいサイズを使ってるんですけど…使い方下手なんですかね?
この人は、なんと10代のとっても若い子です。普段からしっかり歯の健康のことを考えている子で、歯磨きはかかさないそうです。



とても偉い!



この子は口腔内に特に異常はなく、歯間ブラシが間違った使い方をしているわけでも、歯間ブラシのサイズが合ってないわけでもないんです。それを解説します。
歯と歯の汚れを取る清掃補助器具には種類がある


まず最初に、歯と歯の間をキレイにする清掃補助器具には種類があります。一般的な器具は以下の通り
・デンタルフロス
・歯間ブラシ
・糸ようじ(フロスピック)
デンタルフロス


歯と歯の間(歯間部)は歯ブラシの毛先が届きにくいためプラークが残りやすく、むし歯や歯周病が発生しやすい場所です。細いナイロン繊維からできているデンタルフロスを歯間部の清掃に使用するとその部分のプラーク(歯垢)を効率よく取り除くことができます。
歯間ブラシ


歯間ブラシは、L字型(アングル)とI字型(ストレート)の2種類のタイプがあります。
どちらも基本的な使用方法は変わりませんが、L字型の方は奥歯の歯垢除去に適しています。その名の通りL字に曲がっていることから、奥歯と奥歯の隙間に挿入しやすいのです。
一方、ストレートタイプのI字型は、前歯の清掃に適しています。
歯間ブラシのサイズに関しては各種ありますが、無理なくすっと入り、出すときにわずかな抵抗があるものが適切な大きさです。歯間のすき間の大きさや使用部位によって、使用するサイズを使い分けるといいでしょう。
糸ようじ(フロスピック、ホルダーフロス)


ホルダーにフロスが取り付けられているもので、指での操作が難しい方や初めて使う方に適したタイプです。
糸ようじは、F字型とY字型の2種類のタイプがあります。そして分類的にはデンタルフロスとされています。
F型の糸ようじは縦向きにフロスが入っているので、前方の歯をフロッシングすることに適しています。
Y型の糸ようじは、ハンドルに対してフロスが横向きについていますので、奥の方の歯を磨くことに特化したフロスピックだと言えます。



糸型のデンタルフロスは面倒くさい、苦手な人などにおすすめしてます。
歯垢除去の能力は「歯間ブラシ」が最も高いとされている


3種類もあると「どれを使えばいいの?」となりそうですが、歯垢の除去能力「だけ」で見ると歯間ブラシが最も高いことが結果にでています。



え?なんで歯間ブラシの方が汚れが取れやすいの?


歯というのは人それぞれ形が違います。この絵のような凹んでいる歯の場合、デンタルフロスや糸ようじだと凹んでいる部分は掃除できないんです。



だからといって、歯間ブラシを安直に選ぶのはちょっと待った!
覚えていて欲しい!歯間ブラシは適している人がいる
歯間ブラシには適した人がちゃんといます。
基本的には歯間ブラシは歯周病が進行していて「歯肉が下がってしまった人向け」なのです。
もしくはなんらかの理由で歯と歯の間の空隙が広い方など。
子どもや若い人など、歯肉が下がっていない健康な人は、歯間ブラシを無理に使用すると歯肉を下げてしまう原因となってしまうので、デンタルフロス、糸ようじのほうが適しています。



歯垢除去能力が最も高いため、健康な歯肉の人でも歯間ブラシを勧める歯科医師もいます。しかし、実際に私の知り合いみたいに、適していない人が使用してしまっている場合、歯茎が下がってしまう原因となります。なので、そういう事故を防ぐためにもデンタルフロスや糸ようじをお勧めします。
歯と歯の間は虫歯の好発部位
虫歯は歯と歯の間に頻発します。その予防にもデンタルフロスが必須です。
重要なことは、デンタルフロスと歯間ブラシ、どちらの場合でも、歯と歯の間に通すだけでは全く意味がないということです。歯と歯の間に入れたら、歯面に沿わせることがポイントです。つまり、「歯」にきちっと当てる、このことをまず強く意識してください。
歯と歯の間には、「2つの面」があります。片方の歯ともう片方の歯の2つの面です。つまり、一カ所につき必ず2つの面を磨くことになります。これが正しい清掃補助器具の使い方です。そしてもう一つ、歯間ブラシを使う際、みなさん無意識に磨きやすい唇側から毛先を入れているのではないでしょうか。しかし、反対にあたる舌の側からも、歯間ブラシを入れることを忘れずに行ってください。
番外編:タフトブラシ


最後に、知っている方は少ないかもしれませんが、同じ清掃補助器具の1つである「タフトブラシ」についてご紹介します。
「タフト」とは「束」の意味で、ヘッド部分に一束の毛が植えられているものです。歯ブラシだけでは除去しにくい場所を重点的に掃除することができます。
・奥歯の奥や裏
・歯並びが悪いところで歯と歯が重なっている部分
・矯正装置が付いている
・中途半端に生えている親知らず
・被せ物、詰め物と歯の間
・抜けた歯の周り
・子どもの歯の生え変わりの歯に歯肉が被って汚れが取りにくいといった箇所の仕上げ磨き
などに、効果的な補助ブラシです。


これらは、磨きにくい所や歯周病治療には必須の器具です。まだ使ったことのない人は使ってみてください。



全然関係ないけど、タフトブラシはゲームコントローラーの隙間についた手垢の汚れを落とすのにも大活躍します。
まとめ
・歯垢除去の能力は「歯間ブラシ」が最も高いとされている
・歯間ブラシは歯と歯にある程度の隙間がないとかえって歯肉を傷つけてしまう可能性がある
・歯と歯の間は虫歯の好発部位
・歯ブラシで磨きにくい所はタフトブラシを使ってみよう
ではまた次の記事で



歯ぁ磨けよ~